セルフアーカイビングと著作権に関する覚書

 近年はネットの発達で,自分のサイトや研究者用SNSで自身の論文をアーカイブし,多くの研究者に閲覧可能な形にするケースが増えているようだ。

特に近年は図書館も財源が厳しいそうで,私の所属している大学もどんどん電子ジャーナルの契約を打ち切っているので,それならばとできるだけセルフアーカイビングして多くの研究者の方々に自分の論文を読んでもらおうとする人は多いかなと思う。で,私もそうしている。

ただセルフアーカイビングは出版社が持つ著作権の問題なんかもあり,結構躊躇するひともいるのではないか。私も各出版社やジャーナルのポリシーを読んで,色々読んでそれなりに勉強してからアーカイブを始めたけれど,やはり法に触れる可能性のある問題だから最初はドキドキしながら載せた。

そこで,その際に学んだことをここに書き留めておこうと思う。これでセルフアーカイビングが進んで論文のアクセスが容易になればいいと思う。ただここに書いてあることを参考にして失敗しても責任は取れません(お約束の台詞)。

まず,論文を投稿する前の原稿はプレプリントというらしい。欧米ではこのバージョンの著作権は出版後のバージョンと違い自分にあると考えられているそうなので,多くの国際誌はこのバージョンをセルフアーカイビングすることを許可しているよう。確かに,大量の査読コメントをもとに段落単位で消したり増えたりするような修正の前後では論文の体裁が劇的に変わったりもするので,著作権の所在が違うというとそういうもんなのかなあとも思う。

ただこの認識が日本のこの分野でどの程度持たれているかというとよくわからない。いろいろ細かい事情は知らないが,ひとつとしては日本の学会誌では原稿に最初から図表を著者本人がレイアウトし,出版後の体裁でページ数なんかの規定もある。つまり投稿時点で最終稿と同じ体裁の原稿の提出が求められ,一発で採択/不採択が決まることも多いので,査読のやりとりの前後で比較的論文の体裁に変化がないこともあると思う。それを考えると,最終稿とほとんど変わらないものがセルフアーカイビングされるのはまずいのかもしれない。

だから,その辺の細かいポリシーが明記されてない場合,「プレプリントは俺のや!」といって許可を得ず公開してしまうと問題が起こるかもしれない。というわけで,私も国内の学会誌に掲載された論文は,公開が許可されていない場合はセルフアーカイブしていない。

査読を経て掲載が決まった原稿をポストプリントというらしい。よくポストプリントのことがプレプリントと呼ばれているのを耳にするけど,厳密にはそういう区切りがあるみたい。

このバージョンの扱いはかなり出版社やジャーナルによって異なる。

私の経験したケースでいうと,SAGEが出版しているLanguage Teaching Researchはポストプリントもセルフアーカイブしていいらしい。

一方,Oxfordが出版するApplied Linguisticsはプレプリント,つまり査読が入る前の記事のセルフアーカイブを許可しており,ポストプリントは出版後一定の年数が経過したのちにセルフアーカイブが許可されるようだ。

出版校正が入り,ページ番号が付与されたりジャーナルのロゴが入ったりしている最終稿バージョンは,大抵のジャーナルがセルフアーカイビングを許可していないみたい。ただ「許可なく公開することは禁止」という書き方のところは結構あるので,許可を取ればこれももしかしてアーカイブできるようになるかもしれない(でも正式に出版社でオープンアクセス公開にするには結構なお金を払う必要があることを考えると,許可はなかなか下りないのかもなーとも思う。ただこの原稿をセルフアーカイブしている人も国外ではしばしば見かけるので,それはお金を払ってオープンアクセスにしているからか,もしくは案外許可が下りるからかもしれない。そうじゃないケースもあるかもしれないけど私にはよくわからないぷう)。

どの段階でセルフアーカイビングが許可されるかに関しては,そのポリシーを色で分類したRomeo Colorというものがあり,以下のサイトにジャーナル名を入力して検索するとその色が表示される(http://www.sherpa.ac.uk/romeoinfo.html)。

私はこのサイトでチェックした後,細かいところはジャーナルのポリシーを読むことにしている。
おしまい。