2015年のふりかえり

ギリギリセーフ!ギリギリセーフ!

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2015年のまとめ

WordPress.com 統計チームは、2015年のブログの年間まとめレポートを用意しました。

概要はこちらです。

サンフランシスコのケーブルカーには60人が乗車できます。2015にこのブログは約3,200回表示されました。ケーブルカーに置き換えると、約53台分になります。

レポートをすべて見るにはクリックしてください。

英語テキストのサンプルをみて

最初の更新は2015/12/24ですが,随時新しく見たテキストの書き加え等で記事編集を繰り返し行っています。現在の最終更新は2018/2/2です。

 

今(2015年12月現在)まで受け持った大学の授業は自由度が高く教科書の指定もなかったので,私はこれまで,ほとんどの授業では教科書をあまり使わずにやってきました。もちろん信頼できる英文を一から書くのは難しいので,いろいろなところからマテリアルをもってきてそれをもとにワークシートを自分で作ったり,コミュニケーションタスクもどんな活動が出来るか日ごろから考えてネタをストックして時間があるときにプリントを作ったりだとか・・・。

テキストブックは丸善とかジュンク堂とかに行くたびによく英語テキストコーナーみたいなのに寄ってぱらぱらめくってはいるのですが,なんかこれ!っていう感じのテキストブックに出会わなくて(概ね好みの問題ですし,まあ今思えばテキストブックをそんなに知らなかっただけです),あまり使ってませんでした。教員キャリアスタートして4年くらいノーテキストブックでフィニッシュでした(副教材的に学校指定のTOEIC対策本とか使ってたことはある)。

ですがいろいろ思うこともあり,自分も教科書を有効に使って授業ができなきゃいけないなあと思い,2016年くらいからは学会でも教材の企業展示コーナーをよく回ってて,そこで気になったテキストのサンプルをもらったり送っていただいたりする機会に恵まれました(専任教員になったある日,「サンプル送りますよ」と声をかけて頂いてそれからよく送ってもらうようになったのですが,そういうシステムあったんですね,院生に非常勤してた時代なんか知らなくて自費で教科書買ってました・・・)。

以下には備忘録も兼ねて,使ってみようかなと思ったテキストブックを取り上げ,思ったことを書いてみようと思います。

 

■リーディング関係

CONNECTION 3─Intermediate Level

レベルはいろいろあるみたいですが3しか手元にないです。

この教科書はリーディング系で,読解前活動→読解→語彙系課題→理解度チェックと進むスタンダードなものです。リーディングテキストとしては最小構成です。語彙のアクティビティや理解度確認問題は自分でマテリアルを用意すると作るのが本当に大変なのですが,そういうところが含まれていてありがたいですし,個々の課題も面白いです。英問英答の語彙課題はそのままTOEICのようなテストの対策にもなりそうですし,一部の読解問題は「パッセージに直接書いていないから自分で推論して記述しなければならない」問題になっています(推論を促す問題はどうやらこのIntermediate levelからのようで,CONNECTION 2より下のレベルにはついていないようです)。

こういう行間を読んで議論できるような読解問題は,自分でも頑張って作ろうとするのですがなかなか難しいんです。学生さんにも,テキストをよーく読んでこういう問題を作ってきてもらうというタスクを宿題としてやってきてもらったりするんですが,一通りこの問題をやると自分でもどういう問題を作ったらその後の議論が盛り上がるのか分かってくるのではないかと思います。

全体的に,一からやると最も大変なマテリアル探しとそれに即した語彙・理解度チェックの設問がついておりその質も高く,かつ最小構成だからこそこれをもとに色々な活動をプラスアルファで導入しやすくて嬉しいと思いました。事前活動や事後のディスカッションも題材が用意されていてやりやすいので,自分の授業では,内容を把握しディスカッションしたあとにそれを元にしたサマリーライティング活動なんかに使ってみたいと思います。

 

A Visit to Amazing Kansai-based Companies

この教科書はビジネス系の学生が興味を持ちそうな話題をとりあげています。理解度を確認するための課題ももちろんついていて,そのバリエーションも多く飽きが来ないテキストだなと思いました。

このテキストに特徴的なのは,一貫してある人や企業の歴史を紹介しているので,読解活動として時系列を問う問題が多くあることです。特に,毎ユニットの一番最後に,本文をもとに年表を完成させるタスクがあり,これは意味中心の読解サマリーとして面白い活動だと思いました。

ただ毎回ついているcompositionという課題が・・・自分で企業について色々調べて報告する際に,その報告が文章の穴埋めするだけというのが少々気になりました。たぶん形式フォーカス的な活動という位置づけなのでしょうけど,せっかく学生が自分から調べて報告する活動なので,もうちょっと幅を持たせたほうがいいんのかなあとも思います。そこが気になるだけなら,教師自身がこの活動をヒントにしてプロジェクト型タスクとかに改変すればいいので,まあやり方次第なのですが。

 

Collins Communication for International Business: The Secrets of Excellent Interpersonal Skills

上記はアマゾンリンクです(念のため,アフィリエイトではないです)。これは英語授業用テキストではなく,ネイティブ向けのビジネスコミュニケーション入門書です。ただ丸善のテキストの棚で見つけました。

ネイティブ向けなのですが,かなり平易な英語で読みやすく,ページ数もけっこう多いので,入学したばかりの,英語をまじめに勉強してきたビジネス系の大学一年生にオーセンティックな英語を沢山読んでもらいたいという私の意図にピッタリあったマテリアルでした。もちろん理解度チェック問題はついていないので,そのあたりに関しては適宜自分でワークシートなどを作る必要がありますが,ちょくちょく読者の考えを煽る記述も多いので,それを元にインタラクティブに議論しながら進めることができました。

 

Reading Stream – Elementary

色々なレベルがあるようですが手元にあるのはElementaryです。

15ユニットからなる,社会や経済に関するトピックをあつかったリーディングテキストです。

サイトの目次を見ていただいてもわかりますが,それぞれのユニットに「トピックセンテンスとパラグラフの構造を理解する」とか「定義を示して例示する」とか「コミュニケーションのスタイルを理解する」などといったテーマが設けられています。

事前活動でスキーマを活性化させて,1ページ分の読解テキストがあり,事後活動(要約や理解度確認問題)へと流れるスタンダードなリーディングテキストですが,事後活動には,グラフィカルなシートに読解した内容を書き出していって内容をサマリーするという面白い活動が収録されています。このような感じでどの収録パッセージにも,どのような原因からどのような結果があったのかとか,時系列の流れがどうなっているかなど読み解かせて図を完成させるといった課題が付属しています。音声ファイルも付属しているらしく,リーディングをメインに色々な活動に活用できそうなテキストです。

応用としては,T/Fの内容確認から一歩踏み出して,この図を完成させることで内容をまとめ,徐々に慣れてきたところで最終的にはこういった図自体を書いてもらうというタスクも考えられます。また要約を発表したりしてもらうとリーディングとスピーキングの統合的な活動にもなりそうです。

 

CLIL Global Issues

たまたま研究室で前任者かだれかが置いていったテキストに目を通していたら発見したもの。
人種差別やエネルギー問題,絶滅危惧種などについてアカデミックなテーマを幅広く扱っています。
特筆すべきは,タイトルにもあるようにCLILのテキストなので,また図表を読み取らせたり図表に書き込んだりする能動的な読みを促す工夫が多く,その後も自身が思ったことをまとめたりディスカッションをしたりしやすい多くの良質なプロンプトが収録されていることです。
CLILにこだわった先生方の執筆した教科書ということでさすが丹念に練られていて,教科書にそってやっていくだけである程度,質の保証された内容中心の授業ができるのではないでしょうか。
このような内容中心の活動というと,「文を読めているかどうかもわからないのに内容中心なんて!」となる人が多いのですが,ただのTorF活動をするのと図表を読み取らせたりするのは「文が読めていたかどうかわからない」具合で前者がそんなに優れているとも思えませんし,大学生としてせっかく内容のあるコンテンツを題材として学んでいるのなら,「読めたかどうか」だけで終わるのももったいないもの。

ディスカッションはとりあえず日本語でやったとしても,それをもとにさらにマテリアルに戻って深く読めるなら,日本語を使った「英語の学習」としても十分機能すると思います。
ともあれ,こういった内容が扱えそうな授業の受け持ちになったときは是非活用してみようと思いました。

 

Reading Explorer

こちらは教科書についている課題やインストラクションが面白いので,自分であまりタスク自体の準備に時間を取られず発問ベースで取り掛かれそうな教科書です。CENGAGEのNational geographicと提携してるシリーズは内容的に面白いのが多いような気がします。読む量が結構多いので,(消化しきれないと文句言ってる先生も結構いましたが,)別に適宜飛ばせばいいんじゃないかと思います。レベル別にいろいろあるので合わせやすいです。

 

■リスニング+α

Q: Skills for Success

Listening and SpeakingとReading and Writingがあります。1の下にIntroというのがありますが,1からが構成的にも内容的にも面白いと思います。このシリーズの2つ,構成は似てますが,Reading and Writingは結構ライティング目的で使えそうなのでそのうち使ってみたいと思います。ものすごく教養が必要そうなパッセージが載っているわけではないですが,思考を促す良質なテキストやインストラクションが載っていて,テキストの重さと活動とのバランスがいいです(つまりテキストの内容を何とか消化させるだけで終わる,というような悪い意味で難解なテキストになっていない)。上記のReading Explorerのように,テキストにそのまま沿ってやっていっても消化しやすい作りになっているので,余計な手を加えなくても発問ベースで進められる教科書だと思います。

 

Keynote

これもQ: Skills for Successと雰囲気が似ている気がします。スキーマを掻き立てる写真や図表が豊富で発問を投げやすく,かつ構成もしっかりしているので,手を加えなくてもそのまま使える教科書です。これを使うなら,あえて補助プリントとか作るのに一切の時間を割かず,発問やその受け答えの想定を練るのに時間をかけたほうがいいと思います(脱線を許さずライブ感がなくなるほど発問を作りこむという意味じゃないですから,念のため)。個人的には2くらいから面白いです。

TED Talksのリスニングなので,オーセンティックなのに慣らすのに良いですが,それがゆえに最初は学生が苦労するかもしれません(悪いことではないです)。

 

■スピーキングやコミュニケーション関係

Widgets: Task-based course in practical English

これはtask-based language teachingの理念にもとづいた教科書みたいで,前から気になってはいたのですが,北海学園大学の浦野研先生が使っていらっしゃるということでサンプルを取り寄せました。統合的なスキル育成が目的だと思いますがコミュニカティブな色が強いテキストです。

ただTBLTにもとづいているので,ほかのコミュニケーション主体の教科書とはかなり色が違います。「この表現,単語,文法を使ってコミュニケーションしましょう」とか「事前に準備してそれを読み上げてコミュニケーションする」という感じは全くないです。この教科書を配って,「はいじゃあこれについて英語で議論してください」といったところで学生は葬式のように口を閉ざすでしょう。かといって事前にその議論で使うリソースを全部教えてそれを使ってコミュニケーションを行ってしまうとこの教科書のよさが失われてしまいます。他の教科書を使ったコミュニケーション系授業でもそうでしょうが,それ以上に,いかに学習者が英語使用しやすい状況を作り出しinvolvementを高めるかがキーになってくると思います。また当然,事前に表現や単語文法が与えられるときより単語単位の発話や断片発話が多くなるでしょうから,それに対して教師には忍耐力が求められるでしょう。来年はどこかでこのテキストブックを使いたいと思うので,リソースを教授する以外でどのようなプレタスクが行えるか考えて,上手く行った活動やいかなかった活動も含めシェアしていけたらと思います。

 

21st century communication: Listening, speaking, and critical thinking

内容中心で重厚な感じですが,タスクの指示も明確で使い勝手のいい教科書です。ぱっと見難しめですが,逆にこれほど学生が興味を持ちやすそうな内容なら,先生はインタラクションの中でパラフレーズしたり重要な部分を繰り返したりして咀嚼しやすい形に持っていきやすいでしょうし,そういったスキルを私(先生)自体が学ぶのにいい教科書だと思いました。

いい意味で本文の分量が抑えられており,分冊版なら1ユニットを3回の授業で終わらせるというペースで学習が可能です。その分先生は生徒とのインタラクションや生徒が考える時間に割くことができ,しっかりと教科書の内容を消化することができると思います。

 


これを書いて思うに自分は,「タスクを作るのに都合のいいマテリアルが多くある教科書」か,「まったく自分で手を加えなくても良質な発問・インタラクションが行える教科書」という一見背反する特徴をもつ教科書が好きみたいです。

あるとき指導主事の先生がおっしゃっていたのですが,「まず自分で手を加えなくても質の高い発問やインタラクションを行える教科書を使えば,多忙な中でも推論発問や生徒の反応を想定して授業を行えるし,かつそこに集中することでそのような発問やインタラクションの技術が磨かれる。そのスキルを身に着けた上で自分でタスクを作ると,作成したタスク自体の質が上がるということがある」とのことでした。確かに,せっかく時間をかけたお手製のタスクがあまり面白くないという状態は,そのタスクを使うと生徒の反応がどうなるかという見込みが甘いことによって起こることがしばしばあるような気がします。

逆に私なんかは,もともと教科書の縛りが全くないところから英語教師としてのキャリアがスタートしました。未熟ながらにも,静大の同僚の亘理先生と同じように「つまらない授業やるなら舌噛んで死ぬ教」信者なので,事前に時間をかけて面白いタスクを作ろうとするのですが,いかんせん教科書がないゆえにマテリアル探しから初めねばならずタスクづくりにクソ時間がかかり,面白いタスク作ったらそこで終わりみたいなところがあり続けたなあって感じの反省もあります。そのせいか自分としては発問とインタラクションによって生徒の思考を引き出す技術がまだまだだなと感じることが多いため,もう少し英語教師としてステップアップしようとしたら,質の高い教科書を使って,推論発問とインタラクションに集中して授業を行って技術を磨くべきかもしれません。

教師は教壇に立った時点で完成されたものでなければならず,「完全なる知」の伝達者であるという考え方に反対する自分としては,教師も学生とともに学んでいかなければならないということを忘れないでいたいと思います。そのような観点からみると,教師を成長させてくれるテキストブックというのも良い教科書のひとつなんだなと思います。

さて,テキストブックを題材に自分の授業を念頭に思ったことをつらつら書いてみましたが,使用感や,付加した課題などまた書いていければと思います。